「巴里」という文字を見ると、今はもう無くなってしまったが地元の駅前近くにあった喫茶店を思い出す。そこにはいろんな思い出がある。一つの場所は、そんな自分史の中にある。しかし、いくら歴史的に由緒があろうと、地質が珍しかろうと、思い出の地でも土地という視点で見てみると、それは法律や経済と言った制度でコントロールされている。一見なんでもない日常風景も、リアルな世界ががんじがらめにまとわりついていることに、今更ながら気づかされる。聞くところによると、金沢はまた昔の町名に戻すことを始めたらしい。リアルと文化の間に生まれる新しいまちの魅力、今までになかったまちの魅力が見えてくる発見の一冊である。
*青木淳悟著 新潮社 2009
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