「ストレンジ・フェイス」

2010/10/19(Tue)



20世紀という100年は、技術と論理を両輪にそれまで未知で神の領域であった物事を、次々と解明して行った世紀だと思う。そして、より強い謎解きへの思いは、PCを生み出し深部へと迫り行き、遂には生命の根幹にまでたどり着こうとしている。その事が我々にとって本当に良い事なのかどうか、少々疑問に思わなくはない。ただ、PCより優れた手の触覚、異常を察知する目や耳、キーボードで「0」を打ち間違えて世界中がパニックになったり、俺オレ詐欺の話を聞くにつけ、PCより優れた人の能力にホッとする自分が居る。この物語は、シャーマニズムが生きる古き伝統の沖縄八重山群島に現れた高層タワーにまつわる話である。この全てにおいて明解なタワーと、強く曖昧な伝統との間にポッカリとあいた穴からは、PCにすがり生きる今の我々の姿の行く末が見えてくる。この本のようなおぞましい事にならないためにも、本能を磨く事を考えておかねばと思う一冊である。
*青山 真治著 朝日新聞出版 2010

No.180

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