「ひそやかな花園」

2010/11/19(Fri)



この物語は、非配偶者間人工授精によって生まれた子供達の物語である。その事が家族を解体に追い込み「しあわせを見くびっていた」と、ある親は吐露する。子供達も成長するにつれて心の中に拠り所のない何かが大きくなって来て、それを知ろうとしてもがくうちに見えて来たもの・・・家族で居る事の意味を思う。お父さん、お母さんに子供達という家族の姿は全世帯数のもはや三割を切るところにある。昔ながらの有り様では計れない姿がそこにある。三浦展は「共異体」、山本理顕は「地域社会圏」という言葉を作り、今までとは違う有り様の模索が始まっている。「顔を見て、育てて、共に過ごした時間を共有する事が家族だ」こんな一文が出てくる。現実は家族ごっこの時代に終わりを告げようとしているのか・・・そんな事を思った一冊である。
*角田 光代著 毎日新聞社 2010

No.185

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