「海に沈んだ町」

2011/04/20(Wed)



「あん頃、私を苛立たせた町の風景、人々、思い出・・・。それらは全て、懐かしく胸震わせる記憶に置き換えられていた。故郷を憎むという、私の中にずっと変わらずにあったはずの感情は、すでに失われていた。」
この頃は、○○さんという人、○○商店があった場所といった具体的な感覚が薄くなり、経済論理に翻弄されて姿を変えたように一見見えている町。だがそこに暮らしたことのある人にとっては、そんな物には負けない火種がずっとくすぶり続けている。具体的な「人と場所」には、改めて不思議な繋がりと強さがあると思える一冊である。
*三崎 亜記著 朝日新聞出版 2011

No.205

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