「私の東京地図」

2011/12/21(Wed)



「私の東京地図は,三十年の長きに亘って歩いてきた道の順に,心の紙に写されていったものだ。・・・・私の中に染みついてしまった地図は,私自身の姿だ。」こんな書き出しで始まる。それは単に散歩で行くまちを記録したものではなく,暮らしの中から書かれた生活の匂いがある。もちろん同時代を生きたわけではないが,読んでいると何故だかノスタルジックで、豊で,逞しい。人と人の間を、素直に確かめることが難しい今,まちも人もどこかよそよそしい。そんな時だからこそ、営みが見え隠れするこの一冊に,まちの有り様を思う。

*佐多 稲子著 講談社文藝文庫 2011

No.240

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